オンライン診療と同意書取得について
①はじめに
②オンライン診療と同意書
③D to P with N
④おわりに
①はじめに
新型コロナウイルスの感染拡大により、対面で医療機関に受診することが難しくなるケースが増えました。その対応策として急速に発展してきたのが、「オンライン診療」です。
厚生労働省の定義によれば、オンライン診療とは
遠隔治療のうち、医師―患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為
とされています。直接対面をすることなく診察及び診断ができるようになったのは、情報通信機器の発展や時代に沿った変化だと思われます。
また、オンラインの初診については「かかりつけ医」、すなわち「日頃より直接の対面診療を重ねている等、患者と直接的な関係が既に存在する医師」が行うことが原則、とされている点も抑えておく必要があります。
では、オンライン診療のみの診察において取得した、訪問鍼灸・マッサージの同意書は有効なのでしょうか。
結論を言えば、保険者判断である、ということになると思います。ただ、なぜそのような結論に至るのか、考察を深めておきましょう。
②オンライン診療と同意書
厚生労働省のホームページに、『「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に関するQ&A』があります。000903640.pdf (mhlw.go.jp)
さて、このページのA9に
触診等を行うことができない等の理由により、オンライン診療では、診療に必要な情報が十分得られない場合もあることから、オンライン診療で得られる情報のみで十分な治療ができるかどうかは個別に判断されるものと考えています。また、同じ疾患名でも個々の患者の状態は様々であることから、疾患名だけで判断することは困難です。
とあります。まず重要なのは、オンライン診療では、診療に必要な情報が十分に得られない場合もあると文言がある点です。
訪問マッサージにおいて、医師が同意書を記入する際の基準となるのは
1)歩行困難が認められる
2)筋麻痺・筋委縮或いは関節拘縮が認められる
場合となります。そのため、触診や関節可動域の確認、テスト法が使えないオンライン診療のみで果たしてそれらを診察・診断することができるのか、という点です。
そのため、
オンライン診療で得られる情報のみで十分な治療ができるかどうかは個別に判断されるものと考えています。
という上記文言について、これを我々の業界に当てはめますと、オンライン診療で得られた診断基準における同意書の妥当性は個別に判断される、すなわち保険者が個別に判断するものである、ということになるのではないかと考えられます。
当然ですが、発展途上のオンライン診療ですので、厚生労働省としても現時点でははっきりした結論が出しにくく、現場で柔軟に運用ができるように委ねる部分があることはやむを得ないところでしょう。
③D to P with Nについて
オンライン診療などの遠隔医療で用いられる用語に、”D to P with N”というものがあります。これはDoctor to Patient with Nurse の略称で、看護師が患家に訪問している状態で医師が遠隔診療を行うことを指します。
つまり、オンラインのみでは判断できない触診や打診、テスト法などをその場にいる看護師が担い、診断のアシストができるようになります。そのため、保険での訪問マッサージを始めるための基準である「歩行困難」「筋麻痺・筋委縮」「関節拘縮」についても、今後活用される可能性を感じています。
オンライン診療は前述した通り、コロナ禍において急速に発展してきている新しい診療方法ですので、訪問鍼灸・マッサージの同意書取得については、オンライン診療にて同意書取得する必要があった理由も含めて保険者へ事前確認することが適切な保険請求に繋がるものと考えています。
④おわりに
オンライン診療に関する厚生労働省の見解は、以下のページから確認することができます。オンライン診療に関するホームページ|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
オンライン診療では患者の状態に関して得られる情報がどうしても制限されるため、その点の注意喚起の文言が散見されます。また、厳密な制度化が現状ではなされていないため、個別対応になるケースも多くなると考えられ、繰り返しになりますが現状では結論は導き出せないようです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響もまだまだ残っているため、コロナ禍における安心安全な同意書取得方法の一つとして、オンライン診療の発展や、制度化に期待したいと考えています。