レセプト電子化を見据えて
①はじめに
②保険医療機関、保険薬局、柔道整復
③電子化のメリット
④電子化のデメリット
⑤さいごに
①はじめに
訪問鍼灸・マッサージにおいては、現時点では保険請求時の媒体は紙面です。紙面によるメリットやデメリットは様々な見解があると思いますが、今後、電子化を見据えた動きもあるのではないでしょうか。
今回は、他の業種の変遷を踏まえつつ、今後どのような動きが予想されるのか、電子化を進めることによる恩恵や弊害は何か、それらを考察していきましょう。
②保険医療機関、保険薬局、柔道整復
病院などの保険医療機関や調剤薬局は、早い段階からレセプトの電子化が進んでいます。
オンライン請求に関しては平成18年4月10日の省令で、診療報酬の請求にオンラインによる方法が追加されました。
その後、事務の効率化の観点からレセプト電算処理システムが整えられ、平成27年4月の診療分からは、一部の例外を除き、電子レセプトでの請求が義務付けられました。
また、我々と近い業界である、柔道整復はどうでしょうか。
社会保障審議会 医療保険部会 柔道整復療養費検討専門委員会
社会保障審議会(医療保険部会 柔道整復療養費検討専門委員会) (mhlw.go.jp)
では令和4年の7月14日の第23回会議において、議論がされています。
議事録を見ると、ゆくゆくはオンライン請求を実現させることを前提に、まずはシステムの作成と、そのために必須である不正請求対策をどのように施していくか、という内容が主なようです。
令和8年度実施、という具体的な数字もあるようですが、会議の中で「困難ではないか」との指摘もあるように、実現のためにはまだまだ越えなければいけないステップが多いような印象です。
③電子化のメリット
現代日本もキャッシュレス、ペーパーレスが取り立たされ、マイナンバーカードなど公的なものも電子化が進行しています。
電子化のメリットとして考えられるのは
・業務の簡易化、時間短縮
・長期保存に物量がいらずスペースも不要
・コストダウン
・資源の無駄をなくす
といったことがあります。特に紙での請求の場合は物量がすさまじく、治療院側が送る書類の種類が多いことからもわかるように、保険者も何千、何万の書類を捌かなくてはいけません。
これは、はっきり言って大変でしょう。
データの提出で良いのであれば、紙が不要で印刷する手間もいらず、データ化したものを送付するだけで良いので、双方にとって圧倒的な時間短縮になろうことは想像に難くありません。
レセプト類の作成も、例えレセコンを使用していなくても、印刷する前はエクセルやワードを用いることが多いと思われますので、データ送付は難しいことではありません。
また、受領委任制度では、必要書類を最終施術から5年間保存する義務があります。これらを紙で管理するとなると大変ですが、データで可とするなら容易です。このように、電子化進めば、あらゆる業務の手間が遥かに軽減されます。
④電子化のデメリット
電子化されたものは可視化できないため把握しづらく、未知の怖さを孕んでいるように感じることはあるでしょう。最近では、暗号資産大手のFTXが破綻した後の混乱など、電子上での管理の課題も浮き彫りになっています。
デメリットとしては
・電子化を進めるまでの準備期間が長期になる
・移行期の混乱が大きくなり、エラーが増える
・デジタルリテラシーがないと、業務が不可能となる
・セキュリティの問題
といったところでしょうか。例えば、高齢者の方がスマホの使い方に戸惑い、電話やメールができず、店員さんに色々と聞いている光景がよく見られます。
このように、移行期は却って業務量が増えることになるでしょうし、ユーザー側も相応の知識がないと内容に全く着いていけず、業務が不可能になってしまいます。
ただ、これら移行期の混乱が去り、或いはデメリットを見据えて予め対策をしておけば、上記のメリットの比重が大きくなり、業務が圧倒的に簡易化され電子化の恩恵を得られることが期待できるでしょう。
⑤さいごに
訪問鍼灸・マッサージにおいても、遅かれ早かれ、最終的にはレセプトの電子化を実現させることが前提となっていると思われます。問題となるのはその時期ですが、現時点ではなかなか予想が難しいでしょう。
私たちが準備しておくこととしては、受領委任制度を再確認することや、デジタルリテラシーを身に着け、オンラインやクラウドの考え方に慣れておくことではないかと思います。
今のうちから予想される展開を見据えておくと、いざという時に対応が楽になるのではないかと思います。