医療者との共通言語
①はじめに
②共通言語に適さない例
③客観的視点に基づいた情報の重要さ
④まとめ
①はじめに
今回は訪問鍼灸・マッサージを行う施術者の“医療者との共通言語”について投稿致します。
あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師の施術方法は、あん摩・マッサージ・指圧・鍼・灸・整体・カイロプラクティックなど様々な種類があります。
私たち訪問鍼灸・マッサージが行う主な目的は患者様の症状緩和であり、その目的に対してはどの手技も手段の一つです。
しかし、地域包括ケアの中で私たちがチームケアの一員としての役割担っている以上、施術者以外の方々とコミュニケーションをとる際には、客観的かつ双方が理解できる共通言語を用いることで、受け取り手に伝わりやすい表現にする必要があると考えます。
具体的にどういうことか、見ていきましょう。
②共通言語に適さない例
まずは報告等に適さない例を、いくつか挙げていきます。
a)根拠を示さず、共有されていない傷病名を断定して報告書などに記載する事例
施術者は傷病名の診断はできません。
そのため、施術者独自の判断での傷病名を交えた報告は控えた方が良いでしょう(医師が診断した傷病名は活用可能)。
患者様の状態を記述する場合は「○○に~~の症状がある」など、傷病名ではなく症状に着目した報告にすることで受け取り手も客観的事実を把握することができます。b)経穴や経絡等の名前を多用する
経穴は世界保健機関(WHO)でも有効性は認められていますが、医師やケアマネージャーにとっては馴染みが薄いため、報告書への記載にはあまり適さないでしょう。
どうしても経穴を活用して報告等する場合は、別途注釈を入れると伝わりやすいと思います。
上記のような、施術師の視点で伝えたいことを伝えてしまうと、受け取り手である医師やケアマネージャーは報告の内容を理解しづらくなってしまう可能性があります。
それにより、情報共有やチームケアの足かせとなってしまっては患者様の不利益に繋がってしまうため、受け取り手を意識した報告書等の作成が重要です。
③客観的視点に基づいた情報の重要性
客観的視点に基づいた情報は、受け取り手の専門性問わず誰にでも伝わりやすい情報です。客観的な情報は情報自体に伝える側と受け取る側で認識の差異が少なく、チームケアにおいては重要な情報となります。
特に「数値化」した情報は客観的視点に基づいた情報として活用しやすいため、例えば、身長、体重、バイタルサイン、下腿周径、関節可動域、指床間距離など、数値を活用した報告にすることで客観的視点に基づいた情報共有がなされます(例1)。
また、視覚、聴覚、触覚、嗅覚情報は比較的客観性が高いように見えますが、実際には五感も個人の主観の影響を強く受けるため、報告方法には留意が必要です。
五感情報を報告する場合は、患者様の発言を付け加えることで客観性が増します(例2)。
例1)血圧がいつもより高い。×
血圧が189/95であり、普段の平均血圧145/80よりも高い数値である。〇
例2)右足首が痛そうだった。×
訪問時「昨夜から右足首が痛い」と話された。〇
④まとめ
出来る限り客観的視点に基づいた記録・報告にするためには、情報量及び記録のスキルが求められます。
また、時には訪問鍼灸・マッサージを行う施術者として主観的な情報(考察など)を求められることもありますので、客観的視点と主観的視点の両軸を持ち合わせ、それらをシーンによって使い分けることで、チームケアの一員として連携の大きな役割を担っていけると思います。