受領委任制度と償還払い
①はじめに
②受領委任制度
③償還払い
④償還払いが適用される例
⑤まとめ
①はじめに
訪問鍼灸・マッサージでは、平成31年1月に療養費の支給申請(レセプト)を行う「受領委任制度」が開始されました。
原則として保険請求は受領委任制度に則って行われますが、一部例外があり、その場合は償還払いにて請求する必要があります。
これら制度はどのようなものか、また、どのような場合に償還払いが求められるのか、順に見ていきましょう。
②受領委任制度
受領委任制度の意義について、厚生労働省ホームページにある「はり、きゅう及びあん摩・マッサージの施術に係る療養費支給申請(レセプト)の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について」に
保険者等からの委任を受けた地方厚生(支)局長及び都道府県知事が施術者と受領委任の契約を締結することにより、患者の施術料支払や療養費請求手続に係る負担を軽減し、施術者の保険者等への療養費請求手続を明確にし、必要に応じて地方厚生(支)局及び都道府県が施術者や開設者に対して指導監督を行うことにより、療養費の不正又は不当な請求への対応を行うものである。
とあります。
要点としては、訪問鍼灸・マッサージの療養費不正請求の防止、というところが大きいでしょう。
では、どのような内容かと言いますと、同資料に
施術者が、取扱規程に則り、患者に施術を行い、患者等(被保険者等)から一部負担金及び療養費の受領の委任を受け、患者等(被保険者等)に代わって療養費支給申請書を作成のうえ保険者等へ提出し、療養費を受け取る取扱いである。
とあります。
わかりやすく言えば、患者様から医療保険の負担割合である1~3割分の利用料金を頂き、残りの7~9割分を医療保険にて療養費として受け取る、ということです。
メリットとしては患者様の自己負担支払時の金銭的な負担が少なく、また書類の作成も患者様が行わなくてよい、ということです。
ただ、治療院側が行う療養費支給申請書(レセプト)などの、請求業務が複雑になる傾向にありますので、しっかりと知識をインプットしなければいけないところです。
③償還払い
償還払いとは、「患者様から一時的に請求額の全額を頂き、その後患者様の負担割合に応じて、数か月後に保険者から7~9割が患者様に返還される」というものです。一時的に10割を負担しなければならず、患者様の金銭的な負担は大きいものになります。
加えて、保険者への請求も原則として患者様が行わなければならず、手続きが面倒なことも少なくありません。
治療院側の負担や手間は少なめですが、患者様側のご負担が大きいため、「その条件ならば結構です」と、サービス開始までのハードルが高くなってしまいます。
私たち治療院側としては、やはり受領委任制度が適用できるのが望ましいのではないかと思います。
④償還払いが適用される例
先に記したように、訪問鍼灸・マッサージでは原則として受領委任制度が適用されますが、特定の場合に適用できず、償還払いの取り扱いになる場合があります。
以下、それらを具体的に見ていきましょう。
□保険者が受領委任制度に加入していない場合
保険者が受領委任制度に加入するか否かは、任意です。そのため、一部の健康保険組合等は未加入となっています。
患者様の加入している保険の保険者が未加入の場合は、原則受領委任制度を使えませんので、償還払いの取り扱いとなります。後期高齢広域医療連合及び国民健康保険については、全受領領委任制度に加入済ですので、患者様の保
険証が健康保険組合の場合は請求の前に確認すると良いでしょう。
□長期・頻回警告の後、償還払い変更通知が届いた場合
令和3年7月より新設された制度で、初療から2年が経過し、かつ5か月以上で月16回以上施術が行われた患者様に対し、適用される場合があります。
まずは長期・頻回警告通知が届き、それに対して計画書を提出しなければならないのですが、保険者によりその計画書の内容等が不適と判断され場合は、償還払い警告通知が届き、該当患者様は受領委任制度から外れてしまいます。
□施術管理者、開設者又は勤務する施術者の不正が発覚した場合
不正が発覚した場合は、監査を経て受領委任の取扱いの中止措置を受けることがあります。原則として中止後5年間は受領委任の取扱いができないため、必然的に償還払いとなります。
⑤まとめ
訪問鍼灸・マッサージの療養費支給申請(レセプト)を行う「受領委任制度」とはどういったものか、償還払いはどういったものかを正確に把握し、患者様やケアマネージャー様に説明できると、信頼感を得ることができると思います。
複雑な面が多いことは否めませんが、ぜひ上記を参考に、整理してみてください。